「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」を観た感想

「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」を観た感想

イマサラ感が漂いますが、大人も感動するといった評価を目にしたので観に行ってきました。
上映館も増えたようで、近くの…と言っても車で30分強の場所なんですが、映画館でも上映されるようになっていました。

9:20~ の一回だけ上映というのが子供向けなんだなーという印象。

あらすじ

隅っこが好きな「すみっコ」たちが暮らす世界。
そこにある喫茶すみっコの地下室で不思議な絵本に吸い込まれて、絵本の中を冒険することになったすみっコたち。
そんな中、絵本の世界で灰色のひよこと出会い、ひよこのおうちを探すことに。
すみっコたちは無事に元の世界に戻れるのでしょうか?

これ以降はネタバレ上等なのでご注意を。

感動するストーリー

ストーリーはたった一点の泣けるシーンに向かって収束していき、ここ、ここだよ!泣くところ!というのがわかりやすく、正直言って、泣けます。
周りで観ていたチビッコたちは、そのシーンで号泣ですよ。そして号泣が号泣を呼びます。
隣の席でお子様と観ていたお父様は、子どもが号泣し続けていて一生懸命あやしてました。
はっきり言って、泣けます。感動です。

厳しい現実、悲しい別れ、そういった経験をあまりしていないであろうチビッコたちですら号泣するんですから、様々な経験をしている大人たちであればものすごい勢いで突き刺さります。なんなら突き抜ける勢い。
現実を知ったときのひよこの絶望。それでもすみっコたちを元の世界に戻そうとする健気さ。
一緒に旅をしてきて、ひよこと一緒に戻れると思っていたすみっコたちの戸惑い、葛藤。
それまでのほんわかしたムードから一転、悲しみに包まれます。

そして、幸せな最後

最後にすみっコたちとひよこは離れ離れになってしまうのですが、すみっコたちはひよこが寂しくないようにと仲間を用意してあげます。
あぁ、良かった、これでひよこも寂しくないね。
こう書くと、とても良い作品だったんだなぁと思えるんですけどね…

観終えた後の後味の悪さ

後味、悪かったです。
泣ける、幸せな気持ちになるという感想の声が多かったように思うのですが、私は後味の悪さが残りました。

さて、なぜ後味が悪いのか、観た後、少し考えてみたんです。
多分それは、価値観の押しつけと宗教観なんだと思います。

仲間とは?

ひよこは絵本の余白ページに落書きされたイラストで絵本のストーリー上に存在しないため、絵本の中の世界に居場所がなく、仲間もいない、でも、絵本の世界には存在しているという設定なんです。
劇中、仲間という言葉がキーワードとして出てきます。
すみっコたちとひよこは旅を通して仲間となります。
そして、元の世界に戻ったすみっコたちは、ひよこが一人ぼっちにならないように、寂しくないように、自分たちにちょっと似た仲間を作ってあげる(絵本の余白ページに書き加える)のですが…

旅の中で出てきた動物たちや鬼といった絵本に登場するキャラクターもいるんです。
最後はそれらのキャラクターと協力してすみっコたちを元の世界に戻してあげたじゃん?
絵本に登場するキャラクターも仲間なのでは?
最終的にはそれらキャラクターとも仲良くしている様子が描かれますが、そこにすみっコたちの作ったキャラクターを加えるって、単なるエゴじゃん。
すみっコたちのやったことが、遥か上から目線に見えてしまったんです。神が人を作り給うたような感覚。

住む世界の違い

すでに書いたとおり、すみっコたちとひよこは最終的に離れ離れになります。
住む世界が違っても、離れていても、仲間になれる!というメッセージが込められているのかと思います。
ですが、そもそもすみっコたちとひよことは住む世界というよりも次元が異なるのです。
これが現代の分断された世の中、格差が広がった世の中を現しているようで、後味の悪さに拍車をかけます。
絵本の中という世界でしか存在できないひよこに対して、もっと自由で広い世界に存在しているすみっコたち。
そんなすみっコたちが、最後にひよこに対して取った行動は、持てる者が持たざる者に対する一方的な憐れみや施しのように見えてしまうのです。
そしてそれを喜んで享受するひよこに対して、表現し難い闇の深さを感じるのです。

しあわせのカタチ

すみっコたちの世界と、絵本の世界は一方通行。
すみっコは絵本の世界に行けるけど、ひよこはすみっコの世界には行けません。
これには本当に闇の深さを感じざるを得ません。
最後の脱出シーンを見ていると、お前は私達の世界に登ってくることはできないのだよ、という現実を突きつけられているようで、救いのない苦しみに苛まれます。
そして、最後にそれでも絵本の中で幸せそうにしているひよこ。
生きる世界の違いによる現実の理不尽さとそこにある幸福。
すみっコたちは元の世界に戻るためにがんばるんですが、果たして元の世界で生きていくのが良いのだろうか?
自分たちを隅っこに追いやった世界の隅っこで生きていくことが幸せなのだろうか?

書いた奴、誰だよ問題

これね、非常に良くない考え方だと思うんですけど、ふと考えちゃうんですよ。
ひよこを落書きしたやつ誰だよ!って。
お前がこんなことしたばっかりに!って。
でもね、それを言っても仕方ないんです。
原因を責めても、そこに存在しているという事実は変えられないんですから。
それにしても、本来は存在しなくて良いはずなのに、実際は存在しているっていうのは、本当に考えさせられるテーマです。
表向きには子ども向けの作品ではありますが、子どもと観にくる親に向けた強烈なメッセージのある作品とも言えます。

たどり着いた先は社会問題

まぁこじつければどんな話でも社会問題と結び付けられるんですけどね。

この作品は分断、格差社会、多様性、引きこもり、自分探しなど、深刻な問題から意識高い系が好きそうなキーワードまでピッタリと当てはめることができます。
この辺が多くの人の共感を呼び、話題になったんだろうなぁと思います。
私なんかも就職氷河期世代なので、面接落ちまくって自信喪失して、この社会に自分は必要とされていないのではないか的な思考に陥ることはなかったけど、相応に苦労しつつ今の場所にボケーっと突っ立っているわけで。
そんな大人が見るからこそ、観た後に自分の歩んできた道をふと思い出し、涙のしょっぱさとは違った、後味の悪い苦さを感じさせます。

まとめ

イイハナシダナー

キャラクターはしゃべらず、セリフは絵本のように文字が画面に出るだけです。
音声はナレーションだけ。
父と母に絵本を読んでもらっているような演出。
そこがまた色々なことに思いを馳せる余白となっています。
大人が観ても泣ける、という評判はそのとおりです。

最後にいつもの。
60分ちょいの映画を観るのに、上映開始時刻から15分くらい延々と他の映画の予告を流すのはやめろと言いたい。
予告を観たかったらYouTubeなり何なりでみるでしょ。選択肢を与えないやり方は本当に最悪。
ドラえもんの予告なんか2回も流れて、周りのチビッコたちからも、またドラえもん?みたいな声があがってました。

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