香川県ネット・ゲーム依存症対策に関する条例が完全に昭和

香川県ネット・ゲーム依存症対策に関する条例が完全に昭和

乗り遅れた感がありますが、ネットで話題になってるので乗っかっておきます。
全文はこちらに記載されているので興味のある方は一通り目を通してみてください。
原案は コンテンツ文化研究会のサイトに、 1月20日の修正案はITmediaに公開されています。

コンテンツ文化研究会 / Institute of Contents Culture: 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例に関する資料の公開

香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例案」【全文】 – ITmedia NEWS

最初から危険な香りしかしない

前文に書いてある内容が詐欺師的。

世界保健機関において「ゲーム障害」が正式に疾病と認定されたように、今や、国内外で大きな社会問題となっている。とりわけ、射幸性が高いオンラインゲームには終わりがなく、大人よりも理性をつかさどる脳の働きが弱い子どもが依存状態になると、大人の薬物依存と同様に抜け出すことが困難になることが指摘されている。

世界保健機関という権威を持ち出して理論を補強し、より危険度の高い薬物依存を引き合いにして、今すぐやらないといけない!を精一杯演出。
詐欺師がよくやるやつじゃないですか。気持ち悪い。
しかもここではオンラインゲームだけしか例として上げていないのに、いつの間にか定義をネットやその他のゲームにまで押し広げている点も気をつけないといけません。

ポイントその1 謎の県の責務

第4条4項。

県は、子どもをネット・ゲーム依存症に陥らせないために屋外での活動、遊び等の重要性に対する親子の理解を深め、健康及び体力づくりの推進に務めるとともに、さまざまな体験活動や地域の人との交流活動を推進するものとする。

早速きました!
健全な精神は健全な肉体に宿るってやつの誤用ですね!ザッツ昭和。
なるほど、香川県議会は外で遊べば依存症にならないという見解ですか。
依存症だから外で遊ばないのであって、依存症にならないために外で遊ばせるというのは因果関係が逆のような気もします。
この少子化の時代、近所で一緒に遊ぶ子どももいない、学校の校庭も放課後解放していない、いったい子どもたちはどこで遊ぶんでしょうか。
香川県の現状は知りませんが、地方においてはネットやオンラインゲームで遊ぶほうが友達とコミュニケーション取れるんじゃないの?

これは子どもは外で遊ぶものという価値観の押しつけや、子どもが参加したくもない地域のクソみたいな行事への強制参加につながりませんか。
子どもの多様性をガン無視した、実に素晴らしいお考えであります。
県の責務としてこれを推進するわけですね。なるほど。

ポイントその2 学校の責務

第5条の学校等の責務。

学校等は、基本理念にのっとり(中略)心身の調和の取れた発達を図るものとする。

まずね、これ、この条例に全く関係ないじゃないですか。当たり前のことをいまさら書く必要がありますかね。
続いて第5条2項。

学校等は、ネット・ゲームの適正な利用についての各家庭におけるルール作りの必要性に対する理解が深まるよう、子どもへの指導及び保護者への啓発を行うものとする。

香川県の教師の皆様、ご愁傷様です。
学校で家庭のルール作りまで教えて差し上げろと。それは本当に教師が学校で教えるべきことですか?

ポイントその3 事業者の責務

第11条。まるっと引用すると長いので、かいつまむとですね…

「ネットで情報を提供したりゲーム作ったりしてる事業者、お前らは香川県の依存症対策に協力しろ、対策もよろしくな。プロバイダーはフィルタリングしたりして対策しろよ」

事業者の皆様、ご愁傷様です。
GDPRのときみたいに、これからはWebサイトを開いたら「あなたは香川県民ですか?はい/いいえ」みたいなダイアログが出てくる未来が見えますね。
いいえを押すとヤフーに飛ばすようにしてもネットにつながってるわけで、これどうするのが正解なんですかねー、いやー困っちゃうなー

ポイントその4 なんか無責任

第12条。

県は、県民がネット・ゲーム依存症に陥ることを未然に防ぐことができるよう、正しい知識の普及啓発を行うため、必要な情報収集をするものとする。

え?本気?本気でいってるの?
後で触れますが、前文でゲーム障害、オンラインゲームの問題点の話かと思いきや、ネットにまで勝手に範囲を広げてみたり、子どもは外で遊ぶもんだろとか、平日60分/休日90分の時間制限の謎とか、現実が見えていないと思われることを散々言っておいて、正しい知識の普及啓発?
普及啓発以前に、そもそもこの条例自体の普及啓発に問題があるのではないかという考えに至らないのでしょうか。
必要な情報収をした結果の条例とはとても思えません。

ポイントその5 時間制限も無責任

もっとも注目されている第18条2項の中の一文。

子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピューターゲームの利用に当たっては、1日当りの利用時間が60分まで(学校等の休業日にあっては90分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の使用に当たっては、義務教育終了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめることを基準とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければならない。

ゲームは1日1時間ですね、わかります。
古き良き昭和の薫陶を受けた素晴らしい条例であります。
えっと、1日60分だけど休日は90分って、なんとなく決めた感があるんですが、何を根拠としてこの数字になっているのでしょうか?
実際に制限するとした場合に、事業者は協力しないといけないみたいなんで、香川県民だけ60分しかゲームプレイできない制限を設けますか。
でも他のデバイスでプレイしたら積算で60分超えちゃうしなー、困っちゃうよねー、どうしますかねー
マイナンバーででも管理しますか?
そうなれば、なんて素敵にディストピアですね。
飛躍した話かもしれませんが、香川県議会は自分たちがやろうとしていることの先につながるものが何なのか、少し考えてみても良いのではないでしょうか。

最初はネットにも時間制限がありましたが、ゲームだけになりました。
結局これが言いたかっただけでしょ。
なんだかんだで内容に具体性があるのはここだけなんですよ。
これですべてが台無し。本気で依存症対策を推進しようとしているのか疑うレベル。

敵はどこにいるのか?

まず見極める必要があるのは、ネット・ゲーム依存症が本当の敵なのかという点でしょう。
ネットでもゲームでも依存するのは何らかの原因があり、ネットやゲームへ逃避した結果として依存症となるのではないかと私は考えています。
根本的な解決が難しいからこそ、正しい知識、予防、治療といったケアが必要とされます。
難しいからこそ、今できること、やるべきことを考えるべきで、ゲームを敵視して規制することが本当に正しいのでしょうか?
ネットやゲームを規制したからといって、依存症の向こうにいる敵が減るわけでもないし、依存症が治るわけでもありません。

今そこにある危機

私の大好きなネット・ゲームに対する規制だからという理由ではなく、この条例の問題点は「昔みたいにすれば解決するんだよ!」「 ネット・ゲームを規制して制限すれば解決」「面倒なことは学校や事業者がやればいいじゃん。それが当たり前。」という他力本願で認識不足、そして、それに気づくことすらできない想像力しか持たない人たちがルールを作っていることに強い危機感を抱きます。
地方自治は民主主義の学校と言われますが、その地方自治の条例案がこの有様なのです。
でも、きちんとこの条例案も問題として持ち上がってきていますし、悲観するほどではないのかもしれません。

この条例の中にはネット・ゲーム依存症に対する関心と理解を深める、医療機関との連携、依存症に対する人材育成といったこれから考えるべき点も多く盛り込まれています。
しかしながら、問題に取り組もうという真摯さとオレの考える理想の子ども像が混ざりあい、まさにカオス。
真摯さの中に「ネットやゲームは悪い文明」という昭和な価値観と先入観が押し込まれ、オレたちから見れば悪いものなんだから制限されて当然と言わんばかりの内容になっているのは残念です。
ネット・ゲーム依存症の解決のためにみんなで連携、協力しましょう!までで止めておけば多くの人の共感を得られただろうし、時代に先駆けた良い施策となったかもしれないのに。

この条例も悪い方向で話題になっていますが、これがきっかけでゲーム依存症対策の議論が盛り上がれば良いと思いますし、そうなれば内容はともなく価値はあったと言えるのではないでしょうか。

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