ノジマのCERO Z指定ソフト販売中止について考える
家電を販売しているノジマがCERO Z指定のゲームソフト(以下Z指定ソフト)販売を中止するとのことでプレスが出されていました。
ノジマ全店舗、CERO「Z」指定ソフトを 4 月 1 日より販売中止 | プレスリリース | ニュース | 株式会社ノジマ
好きにすれば?というだけの話なのかもしれません。ぶっちゃけ、オンラインも含めて私はノジマで買い物しませんし。
「気になったニュース」でさらっと触れるだけでも良かったのですが、私はレーティング制度自体の根底に関わることだと感じて、どうにも引っかかったので少し深堀りしてみたいと思います。
先に断っておきますが、私はゲーム好きなので公正中立な立場の意見であると言うつもりは毛頭ありません。
安心・安全なお買い物とは?
プレスにはこう書かれています。
ノジマでは、これまで「Z」指定ゲームソフトの販売においては、18才以上を販売対象とすることの表示や購入時の確認などの販売ルールに沿って対応をしておりましたが、来店されるすべてのお客様に、より安心・安全にお買い物をしていただく環境を提供するため、販売自体を中止することを決定いたしました。
なるほど、要旨はZ指定ソフトを取り扱っていると安心・安全なお買い物ができないということのようです。
なるほどね。意味不明だわ。まったくわからん。
特に「安全」って、Z指定ソフトを買うのに危険が伴うのか?
我々は今まで命がけでZ指定のゲームを購入していたのか?
それともノジマの店舗だけはZ指定ソフトを買うのに危険な試練でもあるのか?
さておき、ここではノジマ側の意図を汲んで、Z指定=18禁、つまりは成人向けと定義して考えてみましょう。
例として近いものは、コンビニの成人向け書籍の扱いがあるかと思います。
コンビニではずいぶん前から成人向け書籍の販売を行っていません。
理由はいろいろとあるかと思いますが、パッと思いつくものを挙げると
- 一般の書籍と並列に販売されているのは教育上良くない
- コンビニの限られた店舗スペースでは区分けして販売することが難しい
- イメージアップ
すべて3に集約されていくような気もしますが、表紙の問題や誰でも中身を立ち読みできてしまうことが大きかったのではないかと私は受け止めています。
これとZ指定ソフト販売中止を比較してみればノジマのやっていることが的外れなのは明白です。
Z指定ソフトに限らずゲームソフトは基本的に店頭でプレイできませんから、中身を見ることはできません。当たり前です。
パッケージを手にとることはできるので書籍の表紙と同じ理屈も通らなくはありませんが、Z指定ソフトは方向性が全く違うのでパッケージを見たところで教育上不適切なものとは考えにくいです。
ゲームのパッケージで「ぱぱー、なんでこの人服着ていないの?」などと子どもから質問されることはないでしょう。
目指すところは同じはず
レーティングをする側のCEROのサイトを見るとこのように書かれています。
どなたにも安心してゲームソフトを購入していただくために。
特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構(公式ホームページ)
そして、より楽しんでいただくために。
ここでも「安心」というキーワードが出てきました。
「安全」が出てこないのは、ゲームで物理的に危険な状況になるような事態が考えにくいからでしょう。当たり前ですね。
思うに、ノジマもCEROも目指しているところは同じ「安心」なはず。
それなのになぜ…CEROは「安全」を目指していないからでしょうか?
レーティングの意味
このノジマの動きは、レーティングの価値を消失させることにつながる可能性があるように思います。
ノジマ単体であれば、ゲーム業界やCEROに対する影響も軽微なものでしょう。
ですが、この動きが広がってオンラインも含め多くの店舗でZ指定ソフトの販売がされなくなってきたとします。
販売元としてはZ指定されることで販路を失うのですから、レーティングされることが罰ゲーム化してしまいます。
極論ではありますが、Z指定ソフトを店頭から排除することによりレーティングの価値を低下させ、審査をされないゲームが流通することにつながる可能性があります。
現状でさえゲームソフトはオンラインでいくらでも流通させることができてしまうので、レーティングされていないものが多く流通する可能性があります。
これがノジマやCEROの望む「安心」の形なのでしょうか?ヒャッハー
もうひとつの問題点
電ファミニコゲーマーの記事中にノジマ側はコストの問題ではないと回答しているようですが、そりゃコストがかかるので売りませーんなんて言うバカはどこにもいないわけで…
また取材のなかで「年齢確認など業務上のコストが問題となったわけではない」と回答している。
家電専門店の「ノジマ」が4月1日より全店舗でCERO「Z」指定ソフトの販売を中止
一方、ノジマのプレスも見てみましょう。
■ ノジマの安心・安全への取り組み
ノジマ全店舗、CERO「Z」指定ソフトを 4 月 1 日より販売中止 | プレスリリース | ニュース | 株式会社ノジマ
PS5(PlayStation5)、Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)などのゲーム機や、人気ゲームソフト、スマートフォンの人気機種などの転売が社会問題となっています。ノジマでは、本当に必要としているお客様に商品をお届けするために、営利目的での転売を前提とした購入をお断りさせていただいており、抽選販売や購入履歴の確認などの、さまざまな対策を行っております。
転売対策?Z指定ソフト販売中止のプレスではなかったんでしょうか?
この転売対策への取り組みは良いとして、Z指定ソフトの販売中止のプレスにわざわざ掲載する必要があったのでしょうか。
「ゲーム」という大きなくくりで見れば関連はあるのかもしれませんが、Z指定ソフトと転売問題に直接の関係はありませんよね。私の知っている範囲では「Z指定ソフトが買い占められて入手できない!」なんて聞いたことないですし…
このノジマのプレスの文脈だと、明らかに転売とZ指定ソフトが同列に悪いものとして取り扱われています。
きちんとCEROの審査を受けて、適切な年齢区分を明記してあるゲームソフトが転売と同じく社会悪として扱われているのです。
あくまでノジマ単体の話ではありますが、ここでもレーティング審査を受けることが罰ゲームと化してしまっています。
これは推測になりますが、儲からないゲーム売り場なんて丸ごとなくしたいというのがノジマの本音なんじゃないかと勘ぐってしまいます。
ゲーム売り場を排除する口実にZ指定を使ったのではないかと。
売り場がなければコストゼロ!
抗議の声は
CEROも特に声明を出していませんし、Z指定ソフトを取り扱うかどうかを決めるのは販売店側なので抗議の声もあがらないでしょう。
実際のところ、私自身も今までノジマでゲーム買ったことがありません。
ゲームもパッケージでの購入だけでなくダウンロード販売も浸透してきており、店舗でゲームを買うという行為自体が減ってきているのは確実でしょう。
ただ、CEROのレーティングが店頭販売を制限する目的に使われることは真意ではないでしょうし、ましてや転売と同列に扱われるような社会問題ではないはずです。
ゲーム業界の自浄作用で作られたレーティングの仕組みが、自分たちの首を締めるようなことになってしまうとレーティングの価値が失われ、無法地帯に逆戻りしてしまいます。(それはそれで…とも思いますが)
杞憂に終わればよいのですが、ノジマのこの流れに乗る販売店が続かないことを願います。
難しいでしょうが、ノジマにはこのような方針を撤回していただければと思います。
ネットの場末ではありますが、ささやかながら抗議の声をここに挙げます。
私はそもそもノジマで買い物しないので影響力ゼロですけどね!