【レビュー】ファイナルファンタジー16
ようやくクリアしました。
プレイ時間は55時間、サブクエストも一通りこなして、リスキーモブは全部討伐しました。
ネタバレ気にせず書いているのでその辺はご注意を。
ファーストインプレッションからの変化
体験版を含め、ちょっとプレイした感想を以前投稿しました。
最後までプレイしてみての感想は「面白い気もするけど、ストーリーが最後の最後に最悪」です。
すごく良くできているし面白いんだけど私には合わない。2周めをプレイするほどではないです。
ざっと書くと、ストーリーはダークでもないし殺伐としてもいません。序盤の展開からは想像できないほどあっさりしています。なお、プレイをムービーに中断されるのは最後まで変わりません。
RPGとしての根幹となる戦闘ですが、3体の召喚獣の力を手に入れたあたりからテンポが良くなり、苦痛ではなくなってきます。
戦闘システムとしてはアビリティのビルドを楽しむものなのかもしれませんが、必要性がなかったのでほとんど変えることなく終えました。
では、細かく見てみましょう。
クリアできる難易度に調整された戦闘
アクションRPGではありますが、できるだけ多くの人にクリアしてもらおう、進めてもらおうという配慮が感じられます。FFはフロムゲーではないんです。
アクセサリの選択もクリアへの配慮のひとつです。
プレイヤーが装備によって難易度を変えるスタイルは新しいです。操作補助全開で楽してクリアすることも、アビリティに特化することもできるし、倒せない敵のときだけ操作補助する装備にするといったこともできます。
あくまでもFFなので、こういった難易度調整は良いと思います。
テイクダウンのシステムは、SEKIROのゲージを削って体勢を崩すというものに似ていますが、もっと簡単なシステムなのでアクションが苦手でも強敵を倒しやすくなっています。攻撃とアビリティのゴリ押しでもそこそこ押し切れます。
アクションが得意ならどうなのかというと、回避で物理攻撃も魔法も避けられるので被ダメージを抑えて有利に戦闘を進められます。(WoLongの化勁みたいな感じ)
回避からのプレシジョンドッジを連続でテンポよく入れられると気持ち良いです。回避のタイミングもシビアじゃないので、戦い方がわかってくると戦闘全般のテンポが良くなります。
アビリティも火力重視やテイクダウンを取りやすくするといった方向性を自由に変えることができて、プレイヤーの技量やプレイスタイルにあわせてビルドできます。
アビリティの工夫次第で戦闘の進めやすさが変わってきます。
ただし、ストーリーを進めていかないとアビリティが増えないので、中盤以降にならないとビルドの自由度は広がりません。
戦闘に関してはプレイヤー側で自由なタイミングで難易度を調整できるのですが、その仕組自体に馴染みがありません。この仕組みを理解して使えたかで評価が変わるんじゃないかと思います。
偉そうに書いていますが、私はずっと報酬アップ系をつけたまま終わりました。
絶妙に調整されたバランス
少なくとも私に関しては、RPGでありがちなレベリングや金策とは無縁でした。(アクセサリの効果もあったのかもしれません)
ストーリーやサブクエストをこなしていけば自然と適正なレベルになり、装備や消耗品を買うためにザコをひたすら倒すようなことは一度もありませんでした。
時々ボスに倒されたりはしましたが、そのままリトライで突破できました。
サブクエストの内容が若干冗長というのはありますが、レアな素材を求めてフィールドでザコ狩りを繰り返すこともなく、進めていくと自然に素材が手に入り装備を作ったり買ったりすることができます。
すべての装備を作るにはリスキーモブを探して倒す必要がありますが、別に作らなくてもクリア可能です。
プレイしていると気にならないことかもしれませんが、これって凄くないですか?
すべてのRPGがこうなって欲しいです。
問題はこの絶妙に良いバランスのおかげで「ゲーム」という部分のやりごたえが感じにくいのも確かです。
バランスが素晴らし過ぎるが故に、ゲーム性が薄れたように感じるのは本当にもったいないです。
アビリティのビルドにしても突き詰める必要がないし、ラスボスを倒すのに必要な伝説の武器を手に入れるため強敵と戦ったり、そのためにレベル上げをしたりすることもありません。
ここまで徹底してくると、ストーリーやムービーを見せるためにゲームが存在していると言っても良いかもしれません。
プレイとストーリーとの整合性は最悪
ストーリーを重視するあまり、プレイとの整合性は取れていないですね。かなり配慮されているとは感じるのですが、これはそういうものだと割り切って楽しむものなのでしょう。
設定上、召喚獣となれるドミナントといえども無制限にその力を行使できるわけではないということにはなっています。
でも、結局顕現するんだったらさっさとやれや…みたいに思うのが人情。
また、戦闘中にストーリーの都合が割り込んでくるのもイライラします。
しかも回避しろとか攻撃しろとか指示が出て、ちゃんとボタン押してるのに敵にボコボコにされる展開って意味が全くわかりません。
プレイヤーに何をさせたいわけ?
まずやりたいことがあり、それに合わせてプレイヤーが動かされているという感じが最高にイライラします。
そして、プレイの結果を否定されるのは体験として最悪です。
ファーストインプレッションでも書きましたが、頑張って倒した敵がピンピンしてるのとかムカつく以外の言葉が見当たりません。
ストーリーに絡んでくる敵のほとんどが倒しても復活するとか、化けるとか、そういうのはほどほどにしたほうが良いんじゃないかと思います。何のために倒したのかわからなくなります。
クリア後の感想は「クリア後が最悪」
ストーリーに関しての感想は最悪です。
あくまで私個人の感想なので、違った見方があっても全然良いと思います。
さぁ、ネタバレ満載コーナーのスタートだ。
おそらく今作においては、今までのFFシリーズを再定義するという意味合いもあったと思うし、その意図はすごく伝わってきました。
過去作であれば、少年のクライヴを主人公としたキラキラチャラチャラした物語だったでしょうけど、今作では髭面のおっさん…まではいかないものの、30前後のクライヴが物語の中心です。
これは今までのFFにはない新しい試みであると思います。
謎は謎のまま…
まず、最悪という感想を持ったのは、クリアしても謎が残りすぎる点にあります。
ジョシュアはなぜ生きていたのか。
アルテマはなぜローブ姿のジョシュアに化けていたのか。
ジョシュアはなぜ生きていることを隠していたのか。
クプカはなぜベネディクタにあそこまで執着するのか。
バルナバスはなぜ闇落ちしたのか。
何となく説明はあるんですけど、なるほど!と思えるほどの理由付けがありません。
喉に引っかかった魚の小骨が取れないような嫌な感じのまま終わってしまうんです。「今」を描くことに注力しすぎていて「今」に至る過程がわかりにくい。
ついでに言うとバルナバスにせよディオンにせよ、情報不足すぎ。
今の御時世に対する配慮なのかもしれませんが、それならそれで、その背景が納得できる程度には描いて欲しい。そういった背景がキャラの魅力につながると思うんですが、情報が不足しているので「こいつなんでこんなことしてるんだ?」という風にしか感じられません。
伏線回収も雑で、ミドも突然出てきて「誰?」ってなるのに突然船作り出すし、バイロンも突然出てきてカネに物を言わせるし、「あーあの時のあいつね!いたいた!」という感覚はありません。
キャラは嫌いじゃないんですけどね。
全般的に「こういうもんなんだよ、受け入れろ」と一方的に投げつけられれている感じが強いです。ある意味、不条理を描く世界観とマッチしているのかもしれませんが。
テーマの大きさの割にしぼんだ終わり方
ヴァリスゼアにおいて重要なドミナントや召喚獣という存在、ベアラーやマザークリスタルに関することも、説明はあるけどピンとこない。結局全部アルテマが作ったってこと?
そしてなによりも最悪だと思ったのは、扱っているテーマが差別とか宗教とか政治といった根深い問題なのに、最後にリセットでお終いっていうのがいかにも軽薄。
ゲームかよ!ってゲームなんですよね。
クライヴは世界を変えようと仲間と努力してたんじゃないんかい。
その仲間を置き去りにしてリセットしてお終いってありえなくないですか。あの熱い決意はどこへ行ったんでしょうか。全く感情移入できません。
そして何より腹立たしいのが、世界の理をリセットして、そこまで積み上げてきた世界観やプレイしてきたことのすべてを台無しにするという、プレイヤーを馬鹿にした所業を行うということ。
一時的であれ、プレイヤーが過ごした世界であり、その世界を救うためにプレイしてきたのに。
這ってでも進むという泥臭い話かと思ったら、全知全能の力を手に入れて何もなかったことにしますー俺は死ぬけどなーホワワーみたいな終わり方。脳ミソがとろけそうなほどのファンタジーでした。
映画やドラマならそれも良いでしょう。でも、これはゲームであって、プレイヤーがやってきたことの上にラストがあるわけです。
最後の最後までプレイを否定するような終わり方。これはもう最悪としか言いようがありません。
最後の最後まで抜かりない
エンディングでジョシュアが書いたらしき本が出てくるのだけれど、この話ってジョシュアという作家の書いた作り話だったのかよ、と私は解釈しました。
ゲーム内で出てくるジョシュアも含め、全員本の中の話だったんかいと。
夢オチならぬ、本オチかよと。
だからあんなに都合よくお話が進んでプレイを強引にストーリーに寄せるんだな、そうだよね、本の内容は変わらないもんなと妙に納得してしまいました。
たぶん、一般的には最後にジョシュアが生き還って本を書いたんだね!良かったねー、世界は続いていったんだね、という理解なんだろうけど、そういった演出もなかったし、とてもそういう風には感じられませんでした。
コレが最後のFFなんじゃないか?
終わり方を見ているとそのように考えてしまいます。Reborn的な扱いなのかもしれませんが。
クリスタルは全て消えてなくなり、世界から魔法もなくなる。
今までのFFというか、ファンタジーの世界自体を否定するような終わり方で、そういう箇所に「最後」というメッセージを強く感じたのかもしれません。
ただ、ひとつ言えること。プレイヤーは置いてけぼり。
まとめ
ストーリーに関しては賛否両論あるでしょう。私は圧倒的に否の側です。
多く出てくるクセの強いキャラクターの魅力も引き出しきれていないように思いますし、何よりクライヴに全く感情移入できなかったのが否定的な評価となる要因です。
ゲームとして見ると完成度は極めて高く、ここまでストレスのないRPGは異例とさえ言えるでしょう。
本当に素晴らしい。
その反面、ムービーの多さ・長さや、プレイに対するリアクションがおかしいといった問題も多くあり、ストーリー至上主義の限界を感じます。
FF16の最後のように今まで積み上げてきたものをすべて捨て去って、FFがFF離れをするときが来ているのでしょう。
あと、単純に値段が高いです。