[レビュー]天穂のサクナヒメ

話題の米作りゲームです。
米作りはもちろんのこと、アクションパート、音楽、ストーリー、etc…どの要素もよく作り込まれています。
攻略サイトを見なくてもクリアできるくらいの程よい難易度とボリューム、やりこみ要素も満載と欲張りながらもバランスが取れていて面白いです。
SEKIROをプレイしてからゲームというものを楽しめなくなっていましたが、このゲームで再びゲームをプレイする楽しさを取り戻せました。
発売日に仕事を終えてから買いに行ったら売り切れで、DL購入しました。パッケージ版欲しかったなぁ…

まずは米作り

米作りがガチという話は散々出ていますが、確かに。
私は農家ではなくて、実家のお手伝いレベルでしかコメ作りに参加したことがありませんが、なるほどこれはガチです。
ゲームの枠に落とし込まれている部分はありますが、米作りの1年、さらに次の1年というものがわかるようになっています。

最初はわずかな量で質も低い米しか作れず、サクナヒメも頼りありません。
米を作り収穫し、より良い米を作っていくというサイクルを繰り返すことでサクナヒメを強化できます。
良い米を作ることがアクションパートの攻略につながり、米作りがゲームと密接に関係しています。

米だけではなく道具も進化する

最初はこき箸に臼と杵で脱穀~精米しますが、道具も進化していきます。
学校で習うおなじみの千歯こきや足踏み式の脱穀機、水車まで出てきます。
田起こしもクワから始まり、やがて牛を使えるようになり、アイガモ農法もできるようになります。

農業をとりまく道具の進化もゲームの中で体験することができます。

珠玉のアクションパート

米作りに目が行きがちですが、横スクロールのアクションパートも羽衣を使った移動やコンボ、吹き飛ばしなど爽快感があり、操作していて楽しいです。

簡単操作で爽快アクション

基本的に操作は移動、攻撃、ジャンプの3つに集約されている上に、横スクロールアクションであるため、使うボタンの数も少なくわかりやすいです。
コンボもボタンを連打するだけの簡単操作でつながりますし、羽衣での移動も直感的でわかりやすく、攻防両方に使えるすぐれものです。

武技(いわゆる必殺技的な攻撃)も方向+ボタンという簡単操作で繰り出せ、吹き飛ばし効果のあるものなら敵をまとめて倒すこともできます。

操作は簡単だが奥が深い

一通りの操作は簡単なのですが、慣れてくると色々なことができるようになります。
羽衣を使って高いところに移動したい場合、壁を使うのもひとつの方法ですが、敵を足がかりにしてより高いところへ移動することもできます。羽衣は移動だけでなく、敵の背後に回り込んだり、弱体化させたりといった使いみちもあります。
攻撃も強攻撃を織り交ぜてさらに吹き飛ばしで安全を確保する、弾きを使って弱体化からのコンボ、浮かせて吹き飛ばしといった立ち回りや、武技によっては羽衣移動を絡めて空中戦を中心に立ち回ることもできます。
操作が簡単なので「こういう動きがしたい」という欲求に対して素直に応えてくれます。

それでもやっぱり米作りが重要

簡単操作で爽快感バツグンのアクションパートですが、敵が強くなってくると思うようにいかなくなります。
そのような場合でも、より良い米を作ることで攻撃力や生命力、気力といったステータスが上がり、強い敵とも渡り合えるようになります。


米を作ることがアクションパートの攻略へとつながるので、アクションが苦手でも良い米を作れば案外あっさり攻略できたりもします。

ストーリー

システムもストーリーも「成長」がキーワードであると感じました。
一見、ディズニー映画によくある「自分でトラブルを起こして周りを巻き込んで解決、ちゃんちゃん」的な私の嫌いなストーリーラインのように見えますが、「自分でトラブルを起こすけど自分で解決して周りとわかり合っていく」展開は好感が持てました。
これは完全に私の好みの問題ですが。

サクナヒメの成長

ゲームを初めていきなり親の七光りで自堕落でぐうたらな生活をするサクナヒメが描かれます。
そこで天界に迷い込んだ田右衛門たちと出会い、ヒノエ島へと向かう羽目になります。
そんなぐうたらなサクナヒメも米が成長するようにストーリーを通して成長していきます。

一緒にヒノエ島に追放された人間たちとの交流、親友であることになっているココロワヒメとの対立と理解を通して真の親友になり、両親の足跡をたどり偉業を成し遂げるまで、成長を感じ取ることができます。

サクナヒメに共感

割とヒドイことを平気で言うサクナヒメも、なんだかんだ文句を言いながらも面倒見が良いところがあります。
一般的にゲームにおいてはクエスト面倒くせぇ…となりがちなんですが、先にサクナヒメが面倒!やりたくない!と言い切っちゃうんです。
そんなサクナヒメの性格もあり、プレイヤー(というか私)のクエストに対する気持ちと一致して、とても共感できます。
面倒だけどやらないといけないんですよね…
これを言ったらおしまいですが、わがままなNPCの言うことをなんでプレイヤーがイチイチ聞かなきゃいけないのって思いません?
え?これって私だけ…?

おなじみの昔話

桃太郎を代表とする鬼退治の話や、河童、鶴の恩返し、かぐや姫というのは日本の昔話の定番中の定番です。
それらのエピソードをストーリーの端々に織り込んであり、あぁこれは鶴のやつだ、とかここはかぐや姫だろうな…とわかります。
プレイヤーは完全にわかっているんだけど、いつフラグが立つのか、それがどう回収されるのかが気になってついつい進めてしまいます。ズルい。

日本らしい宗教観

まず神様が多く出てきます。
そして神と人の境目があいまいで、神も人と同じように考え、感じ、わかり合うことができる存在として描かれています。
主神のカムヒツキですら絶対的な存在ではなく、人間味にあふれています。
ときに人が神となることを許容するのも日本らしいと感じました。
登場キャラクターであるミルテのフォロモス教は一神教のようなので、その対比も印象的です。
ゲーム内で神であるサクナヒメの存在とミルテの宗教観が共存できてしまうのも、宗教に関して寛容な日本というバックグラウンドがあるからでなのでしょう。

残された謎とちょっとだけ考察

クリアしても謎として残るものがいくつかありました。
ゆいが何を代償として人の姿にもどったのか。
私は天界に残ることを代償としたと考えています。
地上に戻ることを選択しようとするきんたにショックを受ける描写があったことと一緒に地上に戻ることもできたはずなのに戻らなかったことからそうなのかなぁと。

個人的にはトヨハナがどうやって羽衣の力を手に入れたのかとか(ここでも代償の話が出てきます)、サクナヒメが羽衣の力を引き出す代償は何だったのか(多分自身の命、ではないかと思う)、かいまるはゆいの正体に気づいていたのかも気になります。
ゆいがかいまるに強く当たるのは、正体がバレるんじゃないかという不安からなんだろうなというのは見て取れるのですが、かいまるはしゃべらないので真相は闇です。

このあたりの謎も明らかになるエピソードがあると良いなぁと思います。

グラフィック

アクションパートは横スクロールなので2Dかと思いきや、3D描画したものを真横から見ている形のようです。
画面の奥行きや、光の当たり具合や影の表現も自然に感じ、絵柄を見てわかるとおりリアルな表現ではありませんが、世界観に合った必要充分な美しさです。

天候がアクションパートにも反映され、同じステージでも晴れのときもあれば雨の時もあり、水球に当たる雨粒の表現も丁寧に描かれています。
四季の変化、昼と夜でフィールドも変化します。


ただ、春と夏の変化がわかりにくく、冬に雪が舞うように春に花びらが舞うくらいの演出があっても良いんじゃないでしょうか。

敵である鹿や熊などは、デフォルメされたキャラクターと対象的に妙にガチに作られています。
妙にリアルな敵が浮き状態になったときにクルクル回るのが、非現実的な表現で楽しいです。

音楽

米作りやグラフィックは見て分かる部分だから広く伝わりやすいですが、実際にプレイしないと伝わりにくいのが音楽です。
天穂のサクナヒメの楽曲はゲームのイメージ同様に和風のテイストたっぷりですが、耳に残る楽曲が多いです。
アクションパートにマッチしたノリの良い曲、拠点に戻ったときののんびりした曲、そして田植えの歌。
コナミやファルコムの楽曲のような、ゲームに欠かせない構成要素のひとつとなっています。

田植えの歌も挿入歌のような扱いかと思いきや、米作りの始まりと物語の終わりとをつないでいて心に残ります。

やりこみ要素も充分

ストレートに進めればエンディングまで20~30時間もあれば終わるくらいのボリュームですが、やりこみ要素も用意されています。

素材集めはモンハンを軽くしたようなバランス

装備を作ったり米作りに使う素材を集めるにはアクションパートで収集したり敵を倒して入手しなくてはいけません。
感覚としてはモンハンに近いです。
装備を作る部分に関しては、若干時間はかかるものもありますがそこまで難しいものはなく、肥料の素材などは仲間を収集に送り出せるようになると不足しにくくなります。

おそらくはクリア後に埋めるであろう装備の素材についてはそれなりの労力が必要となります。
なくてもクリアはできるので、無理をして作らなくても問題はありませんが。

装備の作成と真価解放はやや苦行

これも必須ではないので埋める必要はありませんが、装備によっては作成に時間がかかったり面倒な解放条件のものがあります。
~を集める系の条件は単調な作業になるか、時間がかかるので計画的に進めないと面倒なことになります。
夜しか手に入らないアイテムや、特定のボスキャラしかドロップしないアイテムがあり、一度に入手できる数に制限がある辺りもモンハンっぽいなと思います。

探索度

マップごとに達成条件があり、それらをクリアすることで探索度を上げていくことができます。
探索度を上げることが進行条件になっている場合もあり、全く無視して進めることはできませんが、進行するだけなら探索度で引っかかることはないでしょう。
ちなみに私はスッポンをひっくり返すのがなかなかクリアできませんでした。

甲羅に引っ込んだところを羽衣技でひっくり返せば良かったんですが、気付かずに最後に達成となりました。

食事と加工品

日々摂る食事もかなりの種類があり、やりこみ要素のひとつと言えるでしょう。
採集などで得た素材を使った加工品も組み合わせで新たな加工品が作れて、それが新しい食事のメニューにつながったりします。
メニューによって食事シーンで会話が挟まったりしますし、一時的ではありますが能力が上がるので万全を期するためには食事によるバフも欠かせません。

あぶらむし君と天返宮

この二つは完全なやりこみ要素で進める必要は全くありません。
あぶらむし君退治はストーリー上1度はプレイする必要がありますが、その後はプレイしなくても進行には影響ありません。
ただ、成績によって報酬をもらえます。


天返宮はひたすら敵を倒して行くもので、100層で終わるかと思いきやまだまだ先があります。
ここでしか収集できない素材があったり、+装備が手に入るのでやり始めると最後まで引き返せない泥沼へと突入します…
後半は難易度が高く、装備の強化、米作りを繰り返しサクナヒメを強くする必要があるので深いです。かなり深いです。

気になったところ

PS4版でプレイしましたが、バグっぽい挙動がいくつかありました。
割と強烈なものを挙げてみます。

敵が見えない/倒せない

3D横スクロールならではの問題だと思うんですが、ごくたまにですが敵の出現時にZ軸がズレて攻撃が当たらなくなったり、オブジェクトの隙間にハマってしまって倒せないことがありました。
また、オブジェクトの影にハマっていて見えないけど羽衣技の天河などは当たるといったこともありました。
アクションパートでは好きなタイミングで別の場所に移動できるので完全に詰むことはないのですが、マップの最初からになるのはツライですね…

セーブが怪しい

オートセーブだと思いきやアップデート挟むとロールバックしたりしました。結構痛かった…
それとクリア後のセーブもなんかよくわからない。普通はクリア後にセーブ→ロードすれば続きをプレイできるかと思いきや、一部データしか引き継がれない?
しかも一度クリアしてから再度ラスボスチャレンジをしてクリア(2周目クリア)すると、一度目にクリアしたところまでロールバックする??
でも一部アイテムは引き継がれる???
この辺の挙動が全く理解できず、アイテム欲しさに2回クリアしたけどそれ以上チャレンジできずにいます。
アップデートで直ったのかなぁ?

まとめ

ゲームも面白いのですがキャストもとても良く、サクナヒメのサクナヒメらしいボイス、ゆいやきんたの方言、ミルテの癖になる日本語、田右衛門やかいまるの雰囲気、その他キャストもゲームを大いに盛り上げてくれます。
今のゲーム業界では大作とは呼べないかもしれませんが、ストーリーの丁度いいボリューム感、深いやりこみ要素、アクションパートの爽快感と面白さ、ホロリとさせつつクスリとさせるストーリー、印象に残るキャスト、音楽、そしてこだわりの米作り。
あと、河童がかわいい。
ストーリーもきっちりと〆られていて、ほんのりと謎が残っているところも後ろ髪を引かれるところです。
すべてがバランスが良く仕上がっていて、こういうゲームで遊びたかったという面白さにあふれています。

PS4、Switch、PCと広いプラットフォームに対応しているので、ぜひ遊んでみてください!


おもに みみみ

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